少しためになるスパイス以外の話【その1】

少しためになる スパイス以外の話 第1回「カシューナッツ」 こんにちは。スパイスのことをつらつらと勝手に話してきましたが、今週よりスパイスから少し離れて、カレーに使う食材についてのお話しや、新しい食べ方の提案などしたいと思います。 まずは、カシューナッツについて。 僕はミックスナッツの中でカシューナッツが一番好きです。見つけると嬉しくなります。 香りは穏やかで、クセがなく甘みとコクがあり、ミルキーで、軟らかめの絶妙な食感。そのまま食べるのももちろんおいしいですが、カレーではものすごい力を発揮します。水と一緒にミキサーにかけてカレーに入れるだけ、それだけで抜群にコクが出ます。コクが出ると、スパイスの香りも心なしか立ってきて、一段上の香りやうま味になります。これはすごい。 インド料理ではコク出しの食材として良く登場し、すりつぶしてペースト状にしたものを使います。「コルマ」と付く名のカレーは、カシューナッツや生クリームなどでコクを出したコッテリカレーです。 中華では、砕いて担担麺に使ったり、ペーストにせずそのまま鶏と合わせて炒め物の具として使うこともあ

少しためになるスパイスの話【その15】

少しためになるスパイスの話 第15回「ガラムマサラ」 今回はミックススパイス「ガラムマサラ」について。スーパーに行けば、ほぼ必ず棚に並んでいるくらいメジャーになりました。おうちのカレーに本格的な香りをプラスする万能スパイスとして使ってる方も多いのではないでしょうか。 配合は人それぞれ、千差万別、定義はありません。カレーのスパイス配合もまさにそうですが、だから個性が出て面白いなと感じます。大手メーカーの商品も、それぞれ配合が違うので、香りが微妙に違います。比べてみると面白いですよ。 ローストしたり香りを濃くしたり、ブレンドして寝かせてまろやかな香りにしたり、辛みを持たせたり、辛みを抑えて香りを重ねたり、様々な役割を担います。カレーに入れるタイミングを最終仕上げの段階にすることで、フレッシュな香りを残すことが多いです。 ガラムマサラに使うスパイスは、けっして珍しい物ではないです。コリアンダー、クミン、カルダモン、クローブ、シナモンなどなど。カレーに使うスパイスとほぼ同じです。同じなんですが、入れると香りが明らかに変わります。ガラムマサラに使うスパイス

少しためになるスパイスの話【その14】

少しためになるスパイスの話 第14回「ナツメグ・メース」 ハンバーグなどお肉の臭み消しに良く用いられるナツメグは日本人にも馴染みあるスパイスです。カレー作りでは頻繁に使うものではないですが、僕はガラムマサラを作るときに少量入れます。 種子の中の仁を粉末にしたもので、比較的高級なスパイスですが、香りが強いので少量使うだけでも存在感があります。どうやら、ナツメグの大量摂取はあまりよくないようですのでお気をつけください。ちなみに、種子の外を包んでいる皮も「メース」というスパイスになります。ナツメグと似てますがより上品で柔らかな香りです。こちらも高級スパイスで、ガラムマサラの原料として使うことが多いようです。 前回お話したビッグカルダモンを買いにスパイスショップに行ったとき、インド人スタッフが同時にすすめてきたのがメースでした。今思うと、なんですすめてきたんだろうと疑問な部分もあります。インドではよく使うのでしょうか?高い物から順に進めてきた可能性も否めません。ですが、すすめられないとなかなか出会うこともなかったと思いますので、感謝しています。 鶏から取

少しためになるスパイスの話【その13】

少しためになるスパイスの話 第13回「ビッグカルダモン」 日常生活ではまず出会うことのないスパイス。黒く迫力のある見た目に、パンチの効いたスモーキーな香り。皮を取ると中には小さな実が詰まっていて、噛むとミントのような清涼感があります。 しらべのカレーを作るきっかけにもなったビッグカルダモン。独特の燻したような香りが、鰹節の燻した香りを連想させ、お出汁との相性が良いのではと気づかせてくれました。 スパイスからカレーを作ろうと思い立ち、初めてスパイスのお店に行き、見たこともないビッグカルダモンに出会うなり何だこれは⁉と驚きました。いかにも漢方薬のような、アイラ島のスコッチ特有のピート香のような、何とも言えない強烈な香り。好みが分かれそうですが、僕はすごく好きでした。その時は、どのスパイスがどんな役割かも全然分からないまま、レシピに合ったスパイスをベースに購入しました。店員さんに相談しながらおすすめも買おうと思ったのですが、インド人の店員さんは半ば何を言っているのか分からず、ビッグカルダモンはとりあえず買っとけ、これはインドでも高級なスパイスだ、といっ

少しためになるスパイスの話【その12】

少しためになるスパイスの話 第12階 「ジンジャー(生姜)」 ガーリックと同様、僕はジンジャーもスパイスと同じような意識で配合します。カレーはもちろんチャイなどにも使うので、インドではほんとに使う機会が多く、和食でも不可欠な食材です。爽やかで食材の臭みを抑えて癖のある食材もまとめてくれる、大事な役目を担っています。僕は生の生姜しか使いませんが、ジンジャーパウダーという商品もあり、カレー作りでも機会があります。 子供の頃に風邪をひくと、生姜のすりおろしと蜂蜜を混ぜてお湯で割った『生姜湯』を作ってくれて、それが嬉しかった記憶があります。 カレーを作るときは、生姜の火入れと水分の飛ばし方をすごく大切にしています。じっくり焦がさぬように炒めて水分を飛ばします。炒め続けるとフッと香りが変わる瞬間があり、それを炒め終わりの合図にしています。その瞬間が分かると、少し嬉しくなります。 しらべのカレーは和をテーマに作っているので、紅ショウガやガリも良く合います。商品化はしていませんが、生姜を主役にしたカレーを試作したこともありました。ガーリックを少なめにしてジンジ

少しためになるスパイスの話【その11】

少しためになるスパイスの話 第11回 「ガーリック(にんにく)」 先日二郎系ラーメンを食べた話を聞いて食べたくなったので、今日はガーリック、にんにくについてお話ししたいと思います。もちろん僕はにんにくマシマシです。 カレーではガーリックもスパイスのような位置づけで考えてブレンドします。生はもちろん、カレーによってはパウダーも使います。匂いを気にすると、なかなか思いのままに食べることができない食材ですが、そのポテンシャルは本当にすごいです。パンチが強く自己主張してきますが、まわりの食材ともがっちり組んで引き立てる。炒めるとなんとも言えない良い香り、味に深みやコクがでて、食欲をそそります。魔力のような力があります。 ガーリックは、量の増減だけでなく火入れのタイミング、切り方やおろし方を変えるだけでも味が変わります。影響力が大きいが故に、使い方には注意しなければなりません。入れすぎるとガーリックに支配されてしまいますし、具との組み合わせによっても使う量が変わってきます。月並みですが、醤油とにんにくとお肉、この組み合わせがものすごく好きです。もつ鍋、ラー

少しためになるスパイスの話【その10】

少しためになるスパイスの話 第10回「クローブ」 少し甘めで強い香り。アジアはもちろん、欧米でもよく使われるクローブ。丁子の名で漢方でも使われます。 ホールをテンパリングしてつくるカレーレシピはとても多いです。重宝されてます。料理や漢方以外でもよく使われます。例えば歯みがき粉はクローブの香りを感じます。特にサン○ターの、いちばんメジャーな○○Mは、個人的にクローブがいちばん強い商品ではないかと思います。もし使う機会があれば、ぜひ意識してみてください。 昔、なかなか予約が取れないというレストランに食べにいく機会がありました。その日のコースのひと皿で、まるまる1個の玉ねぎにピックで穴を開けて、そこにクローブを刺す。何ヶ所もクローブを刺した玉ねぎを、じっくりオープンで焼き上げただけのひと皿。見た目は決して良いとは言えませんが、玉ねぎの甘みとクローブのさわやかな香りがマッチして、なんとも言えない美味しさでした。僕がクローブを意識した料理はそれが初めてだったと思います。 野菜やお肉などの甘味とクローブの香りは相性が良いかなと思います。しかし、クローブなどホ

少しためになるスパイスの話【その9】

少しためになるスパイスの話 第9回「クミン」 カレーらしい香りのクミン。アジア圏だけでなく、様々な国で使われていて、僕もカレーを作る以前から使う機会のあるスパイスでした。今でもカレーを作るときにはメインとなるスパイスで、使う量も1番多いです。 クミンシードを油でテンパリングして、カレーの仕上げにジュッとかけると、香ばしい香りがフワッとたち、コクがでてなんとも言えない美味しさになります。ただし、クミンはすごく焦げやすいので注意。焦げると苦味だけが残り美味しくないです。加熱した油に入れて、明るい茶色くらいまで色が変わったら充分です。時間にすると30秒くらいでしょうか。 野菜カレーはクミンとコリアンダーだけですごく美味しく作れます。僕が初めてスパイスから作ったカレーは、野菜カレーでした。簡単に作れるレシピで、トマトとクミンがほんとに良く合い、美味しかったです。自分でこんな本格的な味を出せるのかと驚き、感動しました。思い返してみると、そのカレー作りから今に繋がっているんだなと感慨深いです。 このクミン、個人的には醤油との相性がいいと思います。醤油にクミン

少しためになるスパイスの話【その8】

少しためになるスパイスの話 第8回「唐辛子」 辛味の強いものや穏やかなもの、大きさや形、色もさまざま。日本では「鷹の爪」や「ししとう」、アジア圏の「カイエンペッパー」、「レッドチリ」、「ジョロキア」、「ハラペーニョ」、、、ひと口に唐辛子といってもたくさん種類があり、各国の料理に何かしら必ず使われてるので、根付き方がすごいなぁと感心します。 カレーと言ったら「辛い」と連想し、その辛味をつくる1番重要なスパイスで、もちろん僕もほぼ必ず使いますが、入れすぎると他の味を消してしまうので、分量には気を配ります。 辛味の種類が違う胡椒とうまく組み合わせると、奥深い辛味が作れて嬉しくなります。 おうちのカレーを辛くしたいときは、唐辛子と胡椒でバランスをとってみてください。ちなみに、ギャバンやS&Bなどから販売されている[チリペッパー]という商品は、唐辛子をベースに胡椒やガーリック、ハーブなどブレンドされてるので使いやすいです。でも辛味は控えめなので、ガツンと辛味出したいときには不向きです。 僕は、唐辛子の辛味より香りを大事にしています。オイルでテンパリングした

少しためになるスパイスの話【寄り道3】

少しためになるスパイスの話「寄り道3」 <とろりの話> オープンまであと2ヶ月と迫った頃でも、僕は試作に追われていました。さらさら食べれる「さらり」、とろっと濃厚な「とろり」、ふたつのカレーからスタートするコンセプトは決めていました。さらりの味が決まったあとも、とろりの味になかなか納得出来ず、あーでもないこーでもないと試作を重ね、煮え切らない思いに悶々としていました。中途半端に良いものが出来ていたので、方向性を変えずに昇華していこう、できるはずと、今考えると固執しすぎてしていました。ある程度出来たものを全て壊して、いちからやり直すという決断がなかなか出来ませんでした。 僕は、大根とスパイスの組み合わせが大好きで、とろりは必ず大根を使いたいと考えてました。大根はスパイスカレーによく登場する具材で、試作品にも使っていましたが、その時は賽の目切りで食べやすく、食感を残した火入れをしていました。 鰹出汁の風味と、鶏の小間切れと大根、スパイスが相まって、すごく好きな味だったんですが、商品としてのインパクトが足りないなと感じていました。和の料理や食材をスパイ

少しためになるスパイスの話【寄り道2】

少しためになるスパイスの話【寄り道2】 <さらりの話> ある日、試作で作りすぎたキーマをどうやって食べようかと考えてました。ずっと試作と試食を繰り返していた僕は、重たくなくさらさらいきたいな、出汁をかけて食べちゃおう、というきっかけから、さらりが始まりました。 それまでは、キーマカレーは少し汁気のあるタイプで販売しようと考えていました。鰹の風味を生かしたいわゆる『和出汁キーマ』でした。しかし今ひとつ突き抜ける力を感じず、他にない味とも言えず、苦労していたところでした。 お出汁をかけるので汁気がない方がいいなと思い、カレーを炒めて水分を飛ばしてみました。これが含め煮のようにうま味を閉じ込める効果があったようです。ドライキーマのようになったカレーをご飯に乗せて、出汁をかけて食べてみました。ほんとに何気なく、深く考えずに。妻も食べたいと言うことで、2人で食べました。 すると、ひと口目から2人で「うまっ」と声がでました。うま味の重なり方が無理なく、お出汁の香りが更に食欲をそそり、スパイスの香りも押し上げてくれてるような、なんとも言えない美味しさがありまし